ケータリング 東京がわかる
夜逃げと言えば「夜に逃げる」と思うかも知れないが、実際に夜中に荷物の運び出しなどすれば怪しいことこの上ない。
夜逃げは昼間に堂々とするものである。
荷物の運び出し部隊は、辺りにそれらしき怪しい車がないか細心の注意を払い作業を進めていく。
ここで間金の人間に夜逃げがパレたら自分達の身も危険だからだ。
少しでも怪しい車や人物が見えれば作業の手を止めて安全を確認しながら手際よく荷物をトラックに積み込む。
途中、路上駐車したままそこを動こうとしない白のセルシオを見つけた。
全面にスモークを張っていて車内の人物は窺い知れない。
一応念のためにナンバーを控えておき素早く荷物を運び出すといった緊張するシ−ンが続く。
無事に荷物を運び出したトラックは、もう一つの部隊と合流すべくアクセルを踏み込み高速道路へと進む。
途中で若夫婦部隊と待ち合わせ場所で合流し2台の車で目的地を目指す。
しばらくして車内のカメラが後方を走る1台の車を映し出す。
車は白いセルシオで、念のためにメモしておいたナンバーを調べてみると先ほど荷物を運んでいる最中に近くに駐車していた全面スモークガラスを張ったセルシオと同じ車であった。
「尾行されている」車内は一斉に緊張に包まれた。
高速道路上で追尾を振り切ろうにもセルシオと荷物満載のトラックでは勝負にならない。
また、途中までは姿形も見えなかったセルシオがなぜ後をつけて来られたのかも疑問であった。
セルシオのドライバーが闇金の人間であるとすれば、今回の計画自体が無駄になる上に自分達の身にも危害が及ぶ危険性がある。
セルシオをやり過ごすために、ない駐車スペースを探し車を停める。
夜逃げ屋の社長は尾行された原因を探すために若夫婦が乗った車の下部を念入りに調べたところ、いつ取り付けられたのかは不明だがそこには発信機があった。
その発信機を取り外し再び目的地に向かって走り出す夜逃げの一因。
今度は撮り返ってもセルシオはついて来なかった。
その日はどこかの宿で一泊して久しぶりに開放的な気分を味わう若夫婦と子供達。
間金らしき車を振り切った次の目、無事に新居に辿り着き、荷物を運び込み夜逃げは成功した。
これから、新しい土地で仕事を見つけ残った借金を返済するために「夫婦揃って頑張っていこう」「借りたお金は返していきましょうよ」と夜逃げ屋の社長に暖かい言葉を掛けられてハピ−エンドで終わる番組であった。
夜のゴールデンタイムに放送されたのでご覧になった方もおられるのではないだろうか。
一旦は高速を降りて他の車が止めることができる。
しかし、あの番組を見て何か釈然としない気持ちを持ったのはオレだけだろうか?りにも現実離れしていて「視聴者は誤解してしまうのではないか?」と思ったのだ。
ある一面では「闇金からお金を借りるとあんな厳しい取立てに遭うから止めておこう」という教訓にはなったかも知れないが、あの番組には実に多くの矛盾点に満ち溢れていた。
まず「闇金から借金をした」とあったが、そもそも闇金融の人間は一個人に貸さない。
暴利を貧る闇金の手口の多くは、小口の金を貸し付けて「10日でl割」や「1週間サイクルで1割」等の金利を取ろうとする。
客が「元金を返す」と言っても難癖付けて元金の返済はきせず、いつまでも延々と金を搾り取ろうと企てる。
本人から搾り取る金がなくなると、次は家族や親戚、あるいは職場にまで「金返せ」と嫌がらせの電話を掛けて債務者を追い込んでいく。
また、他の手口としては「5万円を貸してくれ」と申し込んだ客に2万5000円を貸し付けて返済日には5万円を返させるという手口もある。
他にも「押し貸し」のように、人の口座に勝手に金を振り込んでおいて法外な利息を要求する迷惑極まりない輩も存在するが、どの手口にも共通して言えることは数万円なる大金を危険極まりない債務者に貸してくれるお人好しの闇金なんでほぼ有り得ないということである。
オレは建設業界にいる人間なのでいろんな業者の倒産話をよく耳にする。
会社を潰して逃げた経営者の話になると9割方は「ヤバイ所から金を借りていた」なんて聞く。
そんな話に「ヤバイ所って何なの?」「何処の誰からいくら借りていたのか?」って突っ込むと誰も明確な答えは持っていない。
「誰の家まで取り立てが来た」だの「家を乗っ取られた」だの、尾ひれ葉ひれが付いた話を信じているだけで事実を知る者は誰もいない場合がほとんどだ。
もし仮に、卯万円なんて金を貸す闇金がいたとすれば、親戚に資産家がいるとか、それ相応の担保がある相手にしか貸さない。
誰彼なしに貸し付けて踏み倒されたり、夜逃げされたりするような間抜けでは、闇とは一吉守え金融屋なんて務まらないのだ。
たとえ万が一、ヤバイ関係の人間に借りてしまった場合でも弁護士の介入により解決する例は山ほどある。
ここで前に書いた出資法のことを思い出してみよう。
ヤバイ人も出資法のことは知っているがそんなもの無視して貸している。
しかし、同時に出資法違反は懲役刑を食らうことも知っている。
今までは暴利を貧りやりたい放題していても弁護士が介入した時点で元金さえ回収できていればそれ以上債務者を追い込むのを止める例はたくさんある。
それ以上難癖をつけて追い込み刑事告訴されて刑務所にでも放り込まれた日には、今まで得た暴利も手にすることはできず、丸刈り頭でカンカン踊りをやらされるはめになる。
これもまた、そんなこともわからないようでは金融屋なんて務まらないのだ。
さて、夜逃げ番組のもう一つの大きな矛盾点は、知る人が誰もいない土地に移り住み、新たな気持ちで生活を始め借金を返していこうって思いはわからないではないが、非常に現実的ではない。
借金取りに追われ無一文同然で夜逃げをし、新しい部屋の家賃も払わねばならず、その上に新しい仕事も探さないといけない。
さし当って今日を生きるための生活費もいる。
その上で「借りた金を返していきましょう」等と言われでも余りにも現実離れし過ぎているのではないだろうか。
おまけに夜逃げなんでしてしまえば正規の金融業者はどこも金を貸してくれない。
明日からの生活費もままならない状態で知らない土地で無職で何をどうせよと言うのだろうか。
そもそも夜逃げとは金のない人間が選ぶ手段ではない。
借金はあるが「払いたくない」って人間がまとまった金を手にした時に採る手段であって、金のない者は夜逃げすらままならないのである。
現に若夫婦も夜逃げ屋の社長がお金を出してくれたお陰で逃げることができたのだ。
明日の生活費もない状態で夜逃げは有り得ないのだ。
おまけに若夫婦二人だけならいざ知らず、小さな子供を連れての夜逃げはもっと現実的ではない。
健康保険に入る際や、子供を学校に通わすにはどうしても住民票を移す必要がある。
住民票の住所変更をすれば、それを元に借金取りが追って来るのは明白だ。
あの番組を見終わった後、「あの家族は夜逃げをする前よりもっと窮地に立たされたのではないか?」って気がしたのはオレだけだろうか。
借金を作ってしまった原因はどうであれ、その後雪だるま式に借り入れが膨らんで最後には闇金に関わってしまい「どうしたら良いんでしょうか?」って質問はオレが書き込みをしている掲示板にもよくある相談事である。
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